皆様、ご機嫌いかがでしょうか?POTLATCH技術部の親方、横山でございます。
さて、ウェブ業界は起業への敷居が低いので、起業を考えている方も多いのではないでしょうか。今回はその理由をいくつか書いてみましょうかね。
目次
1.競合他社が溢れまくっている
「起業しよう」という時に、パソコン一台で身を立てられるウェブ業界。起業の敷居の低さから、大量のフリーランスや中小企業があります。もちろん私たちもそのウチの一つ。
起業がしやすいということは競合他社にあふれており、そこで何が起きるかと言うと「低価格戦争」が始まります。正直、なんの実績も後ろ盾も無い起業したてのフリーランスの売りは「小回り」と「低価格設定」だけです。
そんなハードな世界でお金を稼ぐのは結構厳しい事だと思います。正直、「ウェブ制作で起業したい」という人がいたら止めたいですもん。あんまりいい事が有りません。
それでもやっていくには製品・サービスに明確な「他社との違い」と、その違いを説明できるスキルが必要だと思っています。
2.いつまでも若くない事を忘れるべからず
「IT系」なんていうと、15年前くらいはちょっとかっこいいイメージでしたが、現在「IT系」というと「肉体労働系」と世間のイメージでは大差ない事でしょう。
体がしんどい、というのは紛れもない事実ですし、徹夜が有ったりしますし、ストレスはかなり溜まる仕事なのではないかと思います。
「プログラマー35歳定年説」というのがありますが、プログラマーは35歳以上には肉体的に厳しすぎる職業です。私も業務系プログラマー時代が有りましたので、その過酷さは身をもって知っています。
なにせ家に帰れませんでした。会社のソファーで眠る日々・・・。
それはさておき、起業後の技術屋がどうだ、という事になりますと、ずっと忙しかったです。幸い生きてはこれましたけど、あと10年この暮らしをするのは絶対に嫌です。
30過ぎてから月の半分を徹夜した事も有ります。
さて、「ウェブ制作業」で起業する、というのはこういう事です。いつまでも若くは無い現実を前に、将来設計を含めてどの様にビジネスを構築していくのか、真剣に考える必要が有ります。
3.時代・技術へ適応できるか?
正直、いつかはもっと簡単にウェブ制作が出来る様になると思っています。今でも「無料で!簡単にホームページ!」みたいなのはありますが、ああいうのは未だハードな商業利用には適していない感がありますので全然余裕です。
しかしいつかは「SEO対策もきちんと出来、ユーザーに伝わりやすく、バカみたいに安いサイト制作」というのが出てくる(というかこういうサービス作ってみたい)と思います。
そうなればもう「ウェブデザイナー」なんて職業、地球上から消滅です。
さて、そんな2016年に「ウェブ制作」で起業したいと思いますでしょうか?私なら思いません。
そういった将来的展望も予見していて、それでも初期の資産作りとしてすぐに出来る「ウェブ制作」をやる、というのであれば問題無いと思います。
会社員として働くよりも意外と起業し自分で経営してみると「スピード感」だったり、「変化」というのが絶対に必要になってくると肌で感じました。
起業する、というのはそういった「面倒くさい・疲れる」作業を頻繁にしていくという事なんですよね。大体毎年大きなチェンジをしてきました。対応する案件も規模も毎年違いますし、ちょっと背伸びした案件に手を出して新技術を身に付けたり、といった事が頻繁にありました。
そもそもスタートアップ時から五年、今は全然違う仕事をしているくらい違います。
いつか、こういう時代の新陳代謝に対応出来ない日が来る、という事を忘れずに展望を練らなければウェブ業界は渡り歩けない気がします。
4.差別化
現在、POTLATCHの正確な業務は「ウェブ制作業務」では有りません。もちろん業務の中に「ウェブ制作」は入ります。しかし、大きな枠で捉えるならば「コンサルティング?」でしょうかね。
クライアントの業績アップに直接直結出来る事ならば手段を問わずにやる、というのがスタンスですので、正確には「ウェブ制作業」では無く、「ウェブを利用したコンサルティング業」という事になります。
起業に当たっては自社が販売する製品がなんなのかを考える事は必要です。我々の場合「クライアントが必要としているモノ」を商品にした結果、ただウェブサイトを作るだけ、という事にはなりませんでした。もちろん、それなりの期間、「ただサイトを作る」という事もしてきましたが。
「他の業者と自社の違い」を説明すると、こういう事になります。
実際、ウェブ制作で「強み」を表現するには大したボリュームが有りません。例えば「SEOに強い!」ですとか「安くて速い!」ですとか「デザイン力に自信が有ります!」とか、そういった事になりますけれど、色々な業者のHPを見ていると皆一様にこれらのキーワードを並べているところを見ると、あまり強い特色にはならないだろうと思います。
実際「SEOが!」とか言われてもクライアントは「それって美味しいの?」くらいに思っているはずですから。デザインの方がまだわかりやすいんです。でもデザインだけに依存していても、よほど大手のクライアントでない限りはクライアントの利益にはなりません。
それにそもそもSEOの知識が有り、デザインが出来る、といった事は技術者として最低限の事だと思いますし。
さて、競合が多い中、それでも「ウェブ制作業者」として起業したいでしょうか。私はそうでも有りません。
5.スキルを確認
これに関して、思うところは色々とあります。大体、無茶苦茶技術があり、さらに交渉能力にも長けている人材、というのを私はほとんど見た事が有りません。
IT企業のマヌケな都市伝説に「採用基準はコミュニケーション能力」というのが有ります。
大体、コミュニケーション能力に自信のある人材がPC相手に作業する仕事を選ぶハズも有りません。現実を観ろ。死ぬぞ。
まあ、私は人並みに喋りますけれども、「トークの専門家」では有りません。ですので、私たちはスタートアップ時から業務分担をしています。
勢いで起業するのではなく、落ち着いて周りを見てみたほうがいいのではないでしょうか。私はたまたま人に恵まれていましたが、技術も営業も顧客対応も全て一人でこなす、というのは中々大変です。
自分に何が出来て何が出来ないのかを問い、全て自分で出来る、やってみせる、というのであれば一人で起業しても問題はないでしょう。もし自信のスキルに隔たりがあるのでしたら足りない能力を補ってくれる人材を考えるべきでしょう。もしくは「気合と根性で能力を上げる!」しかないですかね。出来ようができまいが、一人で全部回してみると色々と気付きがあるとは思いますので、やってみる、というのは素晴らしい事です。
6.見栄えは後回し
変な話ですが、起業時にSOHOを嫌がる人がいます。起業時と共に法人設立してしまう人もいます。別に悪くは有りませんが、実際の所クライアントはそういった部分よりも「仕事の質」を判断するものだと思います。
実際少人数で運営しているのであれば事務所は不要ですのでSOHOにしてしまい、必要経費を削減できた分価格設定に反映させるなどの方法が有ります。
例えばですが、「〇〇区に事務所が無いと・・・」とやる側は思っているのですが、私たちも私の周りにも、そういった事を端折って大手と取引している人はかなり沢山います。
店舗であれば看板と立地にお金をかけるのは良いと思いますけれど、クライアントはシビアに「費用対効果」を見ていますので、クライアントに提供できるサービスの質に注力するのがスタートアップ時の秘訣なんじゃないかと思います。
ぶっちゃけ経営が安定しても「クライアントありき」のビジネスですので、常に気心を知るために気を引き締めなければならない、と思っています。
7.ぜんぜん儲からない事を理解しよう
ウェブ制作は土建と同じです。工員がいて、その工員が作業するのに一時間あたりの金額が設定されているという、ただそれだけです。基本価格は安めに見えますが、見積もりを取ると最終的に倍に、というケースもウェブ制作の見積もりに良くあります。
言ってみれば「腕のいい業者」と「普通の業者」と「技術のない業者」があり、価格設定は様々、という事でしょうか。
儲けを出すには「多くの案件を確保し、安く使える人材を探す」という事になります。そんなのは奴隷商の仕事。「インターネットの可能性は無限大!」とか言っちゃう割に内側はとてもアナログです。
だいたい、制作系の仕事をしてきた人であれば社長に腹を立てたことも有り、クライアントや営業の不条理さにつきあった事があり、そういった嫌な事を他人にしたいかどうか、という事になってきますよね。
それにそんな「過酷な労働条件」に対して「優秀な人材」が集まるでしょうか?んなはず有りません。
よって、「ウェブ制作業」を遠目でみた場合、「優秀な人材」を確保するのも困難な道という事です。内側からみても本当に斜陽産業だな、って思います。
それでもやりたい、というのは「それしかできない」か「それをするのが大好き」というくらいの事情でしょうか。
まあ、本当の事を言うと「制作を受注する」のでは無く、「自社でサービス開発して提供する」方が最終的に儲けが大きい気がします。
最後に
あまりポジティブな内容では有りませんでした。別に「お客が取られる!」などと思ってこういう事を書いているのではありません。ただ単純に「ウェブ業界」というのは非常に過酷な状況におかれており、肉体的にきつい割に儲かる仕事では無いという事実をお伝えしたかっただけです。
勿論良い事も沢山あります。それは「様々な業者とのやり取りがあり、様々な業界の事を詳しく知る事が出来る」という点です。ビジネスを行ううえで視野を広げられるのはとても強い武器。
私は別に悲観している訳では有りません。「ウェブを制作できるITスキル」を「他人のウェブサイトを制作する」ことで換金するのはそろそろナンセンスだと言いたいのです。
そのスキルを以て、ウェブ制作以外の箇所でお金を手に入れる方が絶対に効率的です。
もし、ウェブ制作会社で起業しようと思っている人がいるのであれば、少し深呼吸でもして上手なやり方を考えた方がいいのではないか、と思います。