「起業しろ」というインフルエンサーは多いですね。ちょっと無責任じゃねーかな、と思いつつも私も起業してますんで気持ちも解らなくもありません。
さて、実際のところ言うほど「起業」がよいものなのかどうなのか、気になりませんか?
独立起業して7年目の私よこやまなりに、本当に「起業」が良いものなのか、それとも悪いものなのか、実録をベースに書いていきたいと思います。
目次
初年度は地獄行き
私はもともとコールセンターで仕事したり、業務系のプログラマーとしてはたらいたり、色々な仕事を転々としていました。
25歳くらいから転職の間などに友人とウェブ制作の仕事を受注していたり、仕事をしていてもお小遣い稼ぎで印刷物のデザインやウェブ関係のお仕事をしたりしていました。
で、30歳の時に友人と思い切って独立。
理由は色々とありますが、当時勤めていた会社の上司とうまくいかなかったというのもありますし、副業でも収入が毎月15万くらいは入るようになったからというのが理由です。
当時は実家に住んでいましたので、収入が低くてもまあなんとかなるか、って感じでやってました。
実際に一年目の収入がどんくらいかというと200万も有りませんでした。かなりカツカツですね。
初年度、ビジネスパートナーの最初の裏切りがありました。ちょっとした口論で「辞める」と騒いで消えていったのです。
一人になっちゃったしやめようかなー、って思ったんですけれど、幸か不幸か起業している友人や経営者の先輩がたくさんいて、死なない程度に仕事が入ってきちゃう日々でした。
あんまりうまくいかないなら方向転換しようくらいに思っていたのですが、仕事が入ってくると辞めるに辞められません。
さあ、案件終わったし就職するかと思うと電話が鳴り、仕事の依頼が入る。そんな不思議な毎日でした。
やめよう、やめようと思っていたのですけれど、やめようと思っても仕事の依頼が来てしまう。
金銭的にはすごく不自由でしたね。でもすごく面白い日々だった様に思えます。
三年目で上昇気流に乗り、7年目で再び裏切られる
そしてある日、元ビジネスパートナーから復縁のお誘いが。高額案件も取ってきていたし、二度と裏切りはしねえ!くらいの言質も取ったので再びパートナシップを締結。
そこからは収入も上昇していきました。ちなみにコイツには又裏切られるんですけどね。
まあでも、毎日毎日仕事でぎゅうぎゅう詰めの状態が続きました。お付き合いするクライアントもどんどん大きくなり、業績はうなぎのぼり。
年の収入は最大で二人合わせて2400万くらい達成しました。半分づつで1200万ですので悪くないですよね。そのかわり仕事漬けでしたけど。
で、このビジネスパートナーとは4年間仕事をしましたけれど、奴はトンズラをこきましたね。再び。
不穏な空気は辞める半年以上前から流れてはいました。二度目なのでなんとなく心の準備が出来ていたというか。
やつが消えたのは今年2018年の6月。辞めた後、お客さんとお話すると私の知らない事が色々とボロボロ出てきました。
例えば「サイトの成果をもっと望んでいたのに話を聞いてくれなかった」ですとか「サイト修正の依頼をすると怒りそうで連絡しづらかった」ですとか・・・。
どういうことだよ。お前「10代先祖をさかのぼれば全員が親戚」とかピースな事言ってたじゃねえか・・・。何お客さん怖がらせてるんだよ・・・。嘘つくなよ。
売上も成果も上げてきましたし、彼は完全に「調子に乗っていた」のだと思います。
で、今に至ります。
起業が簡単にうまくいかない理由1:起業に裏切りへの覚悟が必要
一人で仕事をしていれば、特に裏切られても酷い気持ちにはならないかもしれません。
ただ、部下がいたら部下に裏切られたという話はそんじょそこらで聞こえてきます。これはいたるところから聞こえてきますね。部下が裏で変なプランを練っているという噂を聞いてしまったとか。
これが何を意味するかというと、「経営・ビジネスに裏切りはつきもの」ということなんです。
私はお人好しなのか、同じ奴に二度も裏切られるというありさま。もうどうでも良いのですけれどね。
完全に一人で仕事をしていれば裏切りには合わないかもしれませんが、どうしても「人間」を巻き込んでしなければならない仕事の場合は「裏切り」というのはそんじょそこらにあります。
サラリーマンだと理解出来ないと思うんですけれど、自営業者って「むちゃくちゃお金や成果に飢えている」ので裏切りのスケールも裏切られたときのダメージも大きいと思うんですよ。
サラリーマンよりも給料が高いとしても、人間関係でのリスクがめちゃくちゃ高いのが「自営業」です。
ですので、自営業が簡単には行かない理由の一つ目は「裏切り」です。
こういった裏切りはカウントしてもキリが無いです。著名な経営者も本を読んでみるとかなりの人数が裏切りにあっていますよね。逆に裏切ったという話はあまり聞きませんけれど、やっていく中で絶対に「裏切り」は避けようが無いのだと思います。
起業が簡単にうまくいかない理由2:野良犬だし実はたいした事が無いから
会社づとめしていると自分の事を買いかぶってしまいます。
「俺のおかげでこの部署・この会社は持っている!」とかね。独立思考の人ほどこういう考えをする程度には自分の能力に自信があるもんです。
もちろん、このうぬぼれというのは「会社のメンバーだから」出来るうぬぼれです。
独立すると本当に自分が「野良犬」みたいなもんだな、って気づくものです。
なんせ、お客さんから仕事を貰うにしても起業したてのガキンチョに積極的にお金を払いたい人ってあまりいないもんです。
少しづつ実績を積み上げて行くと状況は変わりますけどね。でも最初は「足元見られてんなー」みたいな気持ちになることもよく有りました。
そしてやはり一年目は「激安で受注」という制作業としては最悪のお仕事をこなす必要が私の場合はありました。
私の場合は前職がプログラマーでしたので、引き続き同じ様なお仕事を受注する訳には行かなかったんですよ。ウェブ制作の仕事をしていたのなら前の職場を円満退社して下請けで仕事を貰う、という考えもできたんですけどね。
で、とにかく実績づくりのために激安案件を受注。しんどい日々でしたね。
でも不思議なもので、苦労していた日々を思い出すと意外と今とは違う楽しさが有りました。
なんかね、稼ぎ始めると「失いたくない!」って気持ちが湧くんですけど、しんどい時代は「なるようになれよ馬鹿野郎!!」みたいなやけくそさがあって、意外と楽しんでたなって気がします。
起業が簡単にうまくいかない理由3:継続が難しい(体力的にも)
起業するのは簡単で、継続するのは難しいんです。
元ビジネスパートナーみたいに、自分で積み上げた結果をガラガラガッシャンして消えていくアホもいますからね。
いい大人が継続する胆力を見せられない。悲しいですよね。いろんな人からお金を貰って生活してきたのに、今後それに答える事が出来ない。信用もなにもあったもんじゃないです。
経営しているなかで、良いときもあれば悪いときもあるというのは間違いありません。プライベートでもそういうものじゃないですか。
やはりビジネスパートナーがトンズラこいた事は私にとって少なからずショックでした。
せめて二ヶ月くらい前に言ってくれてりゃ良かったんですが、連絡が付かないとクライアントから連絡が有り、やっと連絡が付いたら「事故にあった」という報告でした。
ひとまず体の心配をしつつ「仕事どうすんの?お客さんから連絡来てるけど」みたいに伝えると「もう、出来ません辞めます」みたいな感じでした。
彼は営業担当でしたので、案件を受注してきてくれた今までの歴史には感謝が有ります。「二度裏切った」ということで総合評価は莫大なマイナスですが、事実仕事に尽力してくれていたのは事実です。
お客さんと話していると、彼でストップしてしまっている依頼や要望などがごっちゃり。ひとまず売上を考えずに「顧客の信頼」を回復するために動き回りました。正直しんどかったです。
実は彼が辞める二ヶ月前くらいから新規案件は入ってこなかったですし、さらに彼が辞めてしまった後に立て直しにどうしても時間が必要でした。減っていく預金口座を眺めながらため息の日々です。
正直言うと制作・技術担当で「営業能力が彼よりも低い」私はこのまま仕事を受注やっていけるのかと不安になりました。
しかし多くの方々のお気遣いもありお仕事のご依頼もいただけなんだかんだ仕事を継続出来ると思うことができました。本当にクライアントの皆様のおかげで生きています。
そんな山あり谷ありの歴史を振り返ってつくづく思うのが「継続の難しさ」なんです。
7年やったので、あと3年で10年です。10年やるって一つの目標ですね。
最初の数年間は徹夜を何日もぶっとおしたことや、背伸びして受注した案件がしんどくてしんどくて泣きそうな日々とか、月に休みは下手するとゼロで一日14時間以上仕事してるみたいな非人道的スケジュールをこなしていたわけです。
このスケジュール、流石に体力も衰えてきて今は出来ないと思います・・・。
根性無ければ続きませんでしたね。自分を鍛えてくれた厳しい先輩に自然に感謝出来ました。
で、継続してなんか良いことあった?って言ったら「無茶苦茶成長できて自信がついた」とかそんなもんですよ。
起業前に思っていた「起業後の俺」のイメージと全然違う毎日。そんなに楽にはいかねえなっていうのが本音です。
正直起業後3~4年頑張れば何かしらの成果は出てくるんじゃないかなと。「起業してよかった!」という気持ちに、継続ができればでなる事は出来るでしょう。
でも「良かった」の後には試練が来ます。じゃないと成長できないからなのだと思っています。
そしてうまくいくと絶対に「罠や試練」も待っています。謙虚さを失い初心を忘れてしまうと継続は難しいでしょう。
そしてその「試練」にどう向き合うか。投げ出したくなる気持ちを抑えて、耐える事が出来るのか。
「倒産する」ってまだやっていける可能性が有ったとしても「疲れた」で辞めてしまう人って中にはいると思います。実際にそういったエピソードもいくつか聞いたことがあります。
とにかく「起業するのは簡単」です。考え足らずで勢いばかりの自分のような人間にとっては。しかし、「経営を継続すること」というのは起業をすることよりもよほど難しいです。
起業が簡単ではない理由の中でも「継続」の困難さは理由の一つです。
起業したら最後、中年期で辞めて再就職しようたってなかなか簡単ではありません!
起業が簡単にうまくいかない理由4:実は全然楽しくない
現実は厳しいです。やりたくない事をしてでもお金を掴みにいかないとならないタイミングが有ります。
そしてそのときは「全然おもしろくない」のです。「こんなはずじゃなかった」って思うことも有るでしょう。
実際のところ、どんな経営者でも絶対にサラリーマンより「苦労」が多いハズです。
だって、自分の力で稼いでますもん。来月の給料を自分に払うのは自分なんですよ。その分喜びや収入も多いと思いますけれど、プラスマイナスで行けばしんどさの方が上回っているのではないでしょうか。
サラリーマンとは違い通勤もありません。スーツも私は普段着ていません、どころか作業中はパンツ一丁の事もよくあります。
好きな音楽も聴き放題。作業中にネットサーフィンしても怒る上司はおりません。
こういうところが「独立のメリット」って思われてそうだと思うんですけれど、そんくらい自分に許してないとイヤになりますよ。
結局のところ、起業が簡単にうまくいかない理由の究極って、「思ってたより全然おもしろくない・こんなはずじゃなかった」っていうのがあると思います。
もちろん面白いと言えば面白いんですけれど、面白くない事の方が多いんじゃないかなと。
で、「俺何やってんだろ」ってなる人も結構いるんです。ふと、なにやってんだ俺って。多分元ビジネスパートナーはそんな感じだったんじゃないかと。
「社長になった俺すげえ!」とか「イノベーションしたる!」とか「孫正義を超える!」とか、起業前は威勢の良い事を言えますけれど、大半のかたはヒイヒイ言いながらこの「茨道」を進んでいるのでは無いかと。
そう、起業は簡単じゃない!「思ったよりも面白くないから・嫌なことも大量にこなさないといけないから」のです!
その中でモチベーションを維持するのは修行です!ぼんやり「勝ち組になりてえ」では絶対に起業するなよな!
起業が簡単にうまくいかない理由5:経営者とか社長とか、かっこいいのは名前だけだから
起業する人って「社長」とか「経営者」とか名乗ってみたいっていう軽薄な人が多そうな気がします。
確かに気分良いですよね。
人間は「自分が何者なのか」ということを考える生き物。その状況で「自分は社長だ」「自分は経営者だ」っていう自負は結構気持ちのよいものなんじゃないかと思います。
でも、はたから見て成功している人って本当に幸せなんでしょうか。苦労も多いので、簡単には決めることが出来ませんよね。
言ってみれば経営者って「人類の奴隷」なんですよ。お金を払ってくれる人がどこにいるか解りません。
そんじょそこらで不躾な態度を取れません。だって、どこでいつ誰が自分の顧客になるか解りませんよね?
私が現実で感じた経営者像ですけれど「想像以上に全然偉くない」っていう感じでした。
これは事業規模に反比例するんです。大きな会社の社長さんはすごく腰が低く感じの良い方が多く、小さな会社の経営者の方はワイルドな方が多いイメージです。もちろん全部が当てはまりませんけれどね。あくまで、イメージです。
傾向ですけれど、良い会社の社長さんは口癖みたいに「すいません・ありがとうございます」をぱっと言える方が多いですね。素敵です憧れます。事業規模が小さくても、儲かっている社長さんはやっぱり同じ様な謙虚さを持っています。
あと、ウチは小さいので関係有りませんが、経営者は社員の生産性で悩むことは多いです。他人のモチベーションの維持は容易では無い作業です。
そして社員もお客さんみたいな感じになってしまい、さらにお客さんはお客さんで神様です。そうなってくると「自分は偉い」なんて思うタイミングはほとんど無いですよね。
なんか全方位に「お願い」ばかりなのが「社長」なんじゃないかなって。ウチは社員いませんけれど仕事を頼みたいデザイナーやコーダーにちょっとしんどい仕事をお願いしちゃう事もあるんで・・・。
調子になんて乗れません。
やっすい金を渡して「へっ、仕事だぞよろこべ」みたいな人もいますけど、人気でないじゃないですか。ネットで叩かれて業績悪化した「ワ◯ミ」みたいな会社もありますから、そういうもんです。
そして最終的に「責任」だけは経営者が取らないとならない。社長だの経営者だの、そんなに良いものなのでしょうか。
社長・経営者というのはあくまで「チーム内のポジション」であって、役割が違うだけで偉いとか偉くないとかどうでもいいんですよ。
ご存知かと思いますけれど社員より給料低い社長さんって結構多いですからね。
アイデンティティを保ちたいだけで「社長・経営者」という役職に付くのは全くオススメ出来ません。ただ、成長はやたら出来るポジションです。
最後に
起業をお考えの皆様に自分ごときの体験談が役に立てばなと思って書きました。
無茶苦茶ネガティブなことばかり書いている様な気がしますけれど、それでも「起業したい」という方には起業はオススメです。
私の親友は半分以上が起業しています。1年で潰れた奴はまだ一人もいません。というかまだ誰一人脱落せずに頑張っています。粘り強さが有ればそんな簡単には倒れません。
みんな全部が全部楽しそうにやっているかというと、そんなことありません。売上が下がった月は弱音を吐くこともありますしね。
起業はハードです。絶対に。面倒くさがりはサラリーマンやってたほうが絶対にお得です。
でも、起業して良いことってたくさんあるんですよ。それは今度別の機会に書いてみようかなと。
始めるとなかなか辞められず、歳を取ったら再就職も厳しいので起業はそれなりに慎重になっても損はありません。参考になれば幸いです。